sleep diary’s

To day…

生肉から泡

 

to day sleep

2021/09/21

 

ぐちゃり、ぐちゃり、ぐちゃ。

気づけば、私はキッチンで生肉を捏ねていた。

その姿はまるで人型肉混ぜマシーン。顔に感情など無い。ただ脳みそだけが確かに生きていた。目の前には、刻まれた玉ねぎ、ナツメグ、牛乳。

瞬時にこの生肉はハンバーグになることを理解する。私の中の数億の細胞が「絶対、夢の中でハンバーグを食うぞ!」とリモート円陣を組み、一致団結した。

我ながら、あまりの食いしん坊ぶりに落胆する。

 

 

何分程、時間が経ったのだろう。粘土のように一体化した生肉を見て、「さて、もうそろそろの工程に行こうか」そう思った私は、刻まれた玉ねぎに手を伸ばした。

その瞬間__

 

 

ぺちゃり、

 

 

私の手から、一掴み程の肉の塊が落ちたのだ。

すると突然、天井だけが揺れ始める。埃やゴミが小雨のように私と生肉を襲った。

 

 

私は、生肉を守った。

恋愛映画で言うならば、いじめっ子に水をかけられそうになったヒロインを身を挺して守る男のように。これがどこかで放送されていたら、SNSで「かっこいい!」「私も守って!」とハートの悲鳴が飛び交い、人気を爆発させて、ひと時の人になっていただろう。

 

 

二分もしないうちに大きな揺れはピタッと治った。すると、誰かが私の背中を叩くではないか。余りにも暖かく優しい手だったので、警戒心というものを捨てて振り向く。

 

 

そこにいたのは、顔を真っ赤にした無数の大きなこけしだった。見た目はこけし、目だけ人間、身長は約180cm。

無数のこけし達が私の目を見る。

 

 

「なんなんですか!!!!」

 

 

夢の中だけ威勢のいい私は無鉄砲に怒りをぶつけた。無数のこけしたちの目線が、一気に堕ちた生肉へと変わる。

 

 

ああ、生肉を落としたのが原因か。

はいはい分かりましたよ。

ボールに生肉を戻せばいいんですね。

 

 

落ちた生肉を掴んで、ボールに戻そうとした時、無数のこけしが更に赤くなり、頭が風船のように膨れ上がった。

あまりの恐怖に、これが夢で良かったと切実に思う。夢じゃなければ確実にちびっていた。

 

 

棒立ちでただ見ることしかできない私は、時間が解決するのを待った。すると、先頭に経っていたこけしの頭が破裂したではないか。

無音の破裂と割れんばかりの歓声。

君たちはどこから、声を出しているんだ?

 

 

頭があった場所には、ハンドソープが一つ置いてあった。「これで生肉を洗えと…?」常識的おかしいことは分かっていたが、恐怖に勝てない。

 

 

私は、生肉に2プッシュのハンドソープをかける。ハンバーグ師匠がこの事実を知ったら大泣きするに違いない。ごめんなさい、ハンバーグ師匠。

そして、また生肉を混ぜ始めた。

 

 

薄々分かっていた事件が1分も経たないうちに巻き起こる。それは、こねればこねるほど膨らむ泡だ。こんな物、もう食べれる代物じゃない。

鎮まれ、鎮まれ…!

泡を潰すように捏ねても、泡は生まれる。

 

 

はあ。私の人生おわった。

ああ、もうどうでもいいや。

 

 

思い立った私は、排水溝に足を突っ込む。すると突然、私の体が液状化し他ではないか。意識朦朧とする中、水と一緒に流された。

 

 

こけし達の顔が遠のいていく。

水と一体化した私は今まで無いくらいの幸せに包まれんがら、水道管という名の滑り台をゆっくりと降りていった。

ああ、この先のは何があるのだろう。

天国か地獄か____

 

ああ、楽しみで仕方ない。

早く、もっと早く進め!

そして私に、素敵な景色を見せてくれ…!

 

 

起床.